試合観戦記(05/2/13:オサスナ VS レアル・マドリッド)
今日も独断と偏見による試合のお話。
オサスナは、スペインの北、フランスとの国境近くのパンプロナという街を本拠地とするチーム。現在リーグ11位と、ちょうど中間に位置しています。
首位バルサが前日のサラゴサ戦で勝ち点3を獲得しているので、バルサに離されないためにも、マドリーとしては、どうしても負けられない相手。
マドリーのスタメンは、昨日の予想通り。累積警告で出場停止のフィーゴに替わり、グラベセンがスタメンに入りました。布陣は、グラベセンの一人ピボーテに、右ベッカム、左グティ、トップ下ジダンと、ルシェンブルゴ監督になってからお馴染みの、中盤ダイヤモンド型。
キックオフと同時に、オサスナに攻め込まれるマドリー。とりあえず数的有利を作りながら、水際で食い止める。
しかし、攻め込まれたせいで、自陣に引ききってしまったマドリーは、ボールを奪うも、前線に意味なくボールを放り込むのみで、そこから先に進めない。その意味のないロングボールはすぐさまオサスナに拾われ、攻撃を展開され、マドリーゴールは危険にさらされ続けた。
このようにマドリーが前に進めない原因は、マドリーの守備にある。
もともとマドリーは、守備に組織を持たないという、構造的欠陥を持つ。このような試合展開は、その欠陥が露呈した結果だった。
すなわち、普通のチームなら、人数をかけて攻めてきた相手に対し、誰が誰をマークし、空いたスペースについてのカバーリングは誰がするかなど、約束事があるのだが、マドリーにはそれがない。
おそらくルシェンブルゴ監督は、現在その約束事を植え付けようとしている最中と思われるが、一朝一夕に完成するものではないため、ほとんど機能していない。
そのため、相手に攻め込まれると、古典的人海戦術による後追い守備により、布陣全体がずるずると後退し、選手全員が自陣深くまで下がってしまうため、攻撃を仕掛けるのが遅くなってしまう。よって、ボールを奪い、前線に送っても、そのパスに反応し、攻撃に転じる選手が一人もいない状態が続いてしまうのだ。
また、後追い守備は、秩序なく人を送り込むのみで、守備としての効果があまり望めない。
そのため、ゴール前に人がたくさんいるのに、ゴールが危険にさらされてしまうという、非合理的な状態に陥ってしまうのだ。
マドリーはボールを支配し、攻撃し続けることが出来れば強いが、逆にボールを支配されると、なかなか主導権を握れない。
「攻撃は最大の防御」という言葉がはまり過ぎてしまうチームなのだ。
他方のオサスナは、マドリーとは対照的に、ボールを奪ってから攻撃に転じるのが速く、一人がボールを持てば、まるで糸を引くように他の選手が動く。
足りないのは決定力と、運のみであった。
しかし、そのような素晴らしいオートマティズムの甲斐あって、前半35分、オサスナはウェボ(FW・カメルーン)により先制点があげられる。
ウェボ、アシストしたモラーレス(FW・ウルグアイ代表)に対する、サムエル、エルゲラのマークが外れたところを突かれたのだ。
後半も相変わらず冴えないマドリー。
しかし、グラベセンに替えてソラーリを投入すると、マドリーは流れを引き寄せるようになる。
左サイドを脅かすソラーリは、オーバーラップしたロベルト・カルロスにパス。ロベルト・カルロスは右サイドのジダンにクロスを送る。ジダンがそれを、胸でコントロールし、足で軽くゴール前に落とす。そこに飛び込んだのはラウールだった。ゴールこそならなかったが、マドリーにリズムが生まれた瞬間だった。
その後、グティに替わりオーウェンが投入される。
そして、この英国のワンダーボーイは、その名に相応しい奇跡を起こす。
後半31分、ラウールがPA手前でFKのチャンスを得る。ロベルト・カルロスの蹴ったボールをキーパーが弾き、詰めていたラウールが左足で押し込むも再びキーパーに弾かれる。その浮き玉を身を屈めるようにして、オーウェン(写真右。左はサルガド。)が頭で押し込んだ。
しかし、マドリーの奇跡はこれだけでは終わらなかった。
PAからやや離れた左前方でソラーリが得たFKを、ベッカムが蹴った。そのボールをキーパーが弾いたところに、ゴールの右前に詰めていたエルゲラが足で押し込んだ。
エルゲラの今期初ゴール。
いつものエルゲラ(写真中央)の、スコアラーに対する盛大な祝福をお返しするかのように、皆がかわるがわるエルゲラにしがみついた。それでもエルゲラは、なぜか額にしわがよっていた。喜びよりも、ウェボに献上した1点に対する雪辱を果たしたという達成感が見てとれた。
マドリーはまたしても、内容の伴わない勝利を手にした。
しかし、オーウェンとエルゲラの得点には、確かに勝者のメンタリティが感じられた。試合後、ルシェンブルゴ監督も、そのように語っている。
二人の強いメンタルが、チームに勝ち点3をもたらしたのだ。
今日は、独断によるとベストプレーはなかったが、オーウェンとエルゲラの勝者のメンタリティは好印象であった。なので、二人の強い心がベストプレーに値すると思われる。
薄氷を踏むような勝利だが、今日は勝てただけでも有り難いと思わなくては。
我らマドリディスタにとっては、今は我慢の時期かもしれませんね。
オサスナは、スペインの北、フランスとの国境近くのパンプロナという街を本拠地とするチーム。現在リーグ11位と、ちょうど中間に位置しています。
首位バルサが前日のサラゴサ戦で勝ち点3を獲得しているので、バルサに離されないためにも、マドリーとしては、どうしても負けられない相手。
マドリーのスタメンは、昨日の予想通り。累積警告で出場停止のフィーゴに替わり、グラベセンがスタメンに入りました。布陣は、グラベセンの一人ピボーテに、右ベッカム、左グティ、トップ下ジダンと、ルシェンブルゴ監督になってからお馴染みの、中盤ダイヤモンド型。
キックオフと同時に、オサスナに攻め込まれるマドリー。とりあえず数的有利を作りながら、水際で食い止める。
しかし、攻め込まれたせいで、自陣に引ききってしまったマドリーは、ボールを奪うも、前線に意味なくボールを放り込むのみで、そこから先に進めない。その意味のないロングボールはすぐさまオサスナに拾われ、攻撃を展開され、マドリーゴールは危険にさらされ続けた。
このようにマドリーが前に進めない原因は、マドリーの守備にある。
もともとマドリーは、守備に組織を持たないという、構造的欠陥を持つ。このような試合展開は、その欠陥が露呈した結果だった。
すなわち、普通のチームなら、人数をかけて攻めてきた相手に対し、誰が誰をマークし、空いたスペースについてのカバーリングは誰がするかなど、約束事があるのだが、マドリーにはそれがない。
おそらくルシェンブルゴ監督は、現在その約束事を植え付けようとしている最中と思われるが、一朝一夕に完成するものではないため、ほとんど機能していない。
そのため、相手に攻め込まれると、古典的人海戦術による後追い守備により、布陣全体がずるずると後退し、選手全員が自陣深くまで下がってしまうため、攻撃を仕掛けるのが遅くなってしまう。よって、ボールを奪い、前線に送っても、そのパスに反応し、攻撃に転じる選手が一人もいない状態が続いてしまうのだ。
また、後追い守備は、秩序なく人を送り込むのみで、守備としての効果があまり望めない。
そのため、ゴール前に人がたくさんいるのに、ゴールが危険にさらされてしまうという、非合理的な状態に陥ってしまうのだ。
マドリーはボールを支配し、攻撃し続けることが出来れば強いが、逆にボールを支配されると、なかなか主導権を握れない。
「攻撃は最大の防御」という言葉がはまり過ぎてしまうチームなのだ。
他方のオサスナは、マドリーとは対照的に、ボールを奪ってから攻撃に転じるのが速く、一人がボールを持てば、まるで糸を引くように他の選手が動く。
足りないのは決定力と、運のみであった。
しかし、そのような素晴らしいオートマティズムの甲斐あって、前半35分、オサスナはウェボ(FW・カメルーン)により先制点があげられる。
ウェボ、アシストしたモラーレス(FW・ウルグアイ代表)に対する、サムエル、エルゲラのマークが外れたところを突かれたのだ。
後半も相変わらず冴えないマドリー。
しかし、グラベセンに替えてソラーリを投入すると、マドリーは流れを引き寄せるようになる。
左サイドを脅かすソラーリは、オーバーラップしたロベルト・カルロスにパス。ロベルト・カルロスは右サイドのジダンにクロスを送る。ジダンがそれを、胸でコントロールし、足で軽くゴール前に落とす。そこに飛び込んだのはラウールだった。ゴールこそならなかったが、マドリーにリズムが生まれた瞬間だった。
その後、グティに替わりオーウェンが投入される。
そして、この英国のワンダーボーイは、その名に相応しい奇跡を起こす。
後半31分、ラウールがPA手前でFKのチャンスを得る。ロベルト・カルロスの蹴ったボールをキーパーが弾き、詰めていたラウールが左足で押し込むも再びキーパーに弾かれる。その浮き玉を身を屈めるようにして、オーウェン(写真右。左はサルガド。)が頭で押し込んだ。
しかし、マドリーの奇跡はこれだけでは終わらなかった。
PAからやや離れた左前方でソラーリが得たFKを、ベッカムが蹴った。そのボールをキーパーが弾いたところに、ゴールの右前に詰めていたエルゲラが足で押し込んだ。
エルゲラの今期初ゴール。
いつものエルゲラ(写真中央)の、スコアラーに対する盛大な祝福をお返しするかのように、皆がかわるがわるエルゲラにしがみついた。それでもエルゲラは、なぜか額にしわがよっていた。喜びよりも、ウェボに献上した1点に対する雪辱を果たしたという達成感が見てとれた。
マドリーはまたしても、内容の伴わない勝利を手にした。
しかし、オーウェンとエルゲラの得点には、確かに勝者のメンタリティが感じられた。試合後、ルシェンブルゴ監督も、そのように語っている。
二人の強いメンタルが、チームに勝ち点3をもたらしたのだ。
今日は、独断によるとベストプレーはなかったが、オーウェンとエルゲラの勝者のメンタリティは好印象であった。なので、二人の強い心がベストプレーに値すると思われる。
薄氷を踏むような勝利だが、今日は勝てただけでも有り難いと思わなくては。
我らマドリディスタにとっては、今は我慢の時期かもしれませんね。
by kobo_natsu
| 2005-02-15 09:32
| 試合観戦記