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ブラン・レブルーの行く末

2月9日に行われたブラジルとの親善試合においてレブルーが見せたパフォーマンスは、 それまでぼんやりとしか見えなかった復調の兆しを、誰の目にも明らかなほどに鮮やかに映してみせた。暗く長いトンネルの向こうからかすかに見える光を目指し、時にぬかるみに足を取られ、時に疲弊して、這いつくばりながらも、レブルーはその歩みを止めることはなかった。 ぬかるみにはまり、頭まで沈み、もはやこれまでかと思われたときに、瀕死のレブルーに手を差し伸べ、トンネルの出口まで導いたのが、98年W杯、2000年EUROの「スーパーダブル」の経験者であるローラン・ブランである。
ブランは、レブルーのポテンシャルを理解していた。彼らは勝てないのではない、勝てるような環境を与えられていなかっただけだった。高級食材が持ち味を殺されて、無造作に皿に盛られただけだった。

そうして迎えたEURO2012の予選、親善試合では、ナスリ(MF・アーセナル)、リベリ(MF・バイエルン・ミュンヘン)、グルキュフ(MF・オリンピック・リヨン)、メネズ(FW・ASローマ)という前線のタレントをどのように使いこなすかが課題となった。
EURO2012予選の対ルクセンブルク戦では、2月のブラジル戦で活躍したメネズを外し、守備的MFの位置にグルキュフ、2列目に右からリベリ、ナスリ、マルーダ(MF・チェルシー)を配置するという、奇抜なアイデアに出た。結果として試合は0-2でレブルーが勝利したものの、内容は必ずしもスコアに見合ったものではなかった。ブランはおそらく、シャビ・アロンソ(MF・スペイン代表、レアル・マドリッド)のように中盤の底から司令塔として働くグルキュフを期待していたのであろうが、前線に比してプレッシャーの厳しい中盤の底は、グルキュフには少々荷が重いように思えた。勝手がわかってなかった、というのもあったのだろう。激しいプレスを受けながらもボールをキープし続ける技術は、2列目の選手には一朝一夕に身につくものではないことが伺えた。

その後のクロアチアとの親善試合では、中盤の底にアルー・ディアラ(MF・ジロンダン・ボルドー)、マテュイディ(MF・サンテティエンヌ)という「専任」を置き、前線は右からメネズ、ナスリ、マルーダとルクセンブルク戦とは打って変わって妥当な布陣で臨んだ。結果は0-0とスコアレスドローに終わった。試合の内容も、相手が守備的であったとはいえ、可もなく不可もないといったところだった。中盤から前線への繋ぎがうまく行かず、かといってサイド・アタックを仕掛ける場面も少なかった。

この2試合で試した奇抜な布陣と妥当な布陣、すなわち、ルクセンブルク戦で採用しためぼしい前線の選手を無理やり全て使う布陣とクロアチア戦で採用した適材適所に各ポジションに専任を置く布陣のいずれがベストかについては、スコアだけを見れば前者の方が上手く機能したようにみえるが、試合内容としては、いずれが優れているとは言えないように思われた。個人的には、グルキュフは2列目で使うべきであり、慣れないポジションを強いるべきではないように思われたため、後者のクロアチア戦の布陣を踏襲してチームを練成していった方が良いのではないかと思われる。この場合、ナスリとグルキュフは同時起用ではなく択一的起用になってしまうが、それは彼らのコンディションや相手のスタイルに合わせて、いずれを起用するかを模索してゆけばよいだろう。
1人の選手に頼った布陣が危機管理として好ましくないことは、2002年W杯を見ていれば明らかである。ジダンの負傷により自滅した教訓は、新しい世代のレブルーの土台を作っている今こそ活かさなくてはならない。択一的起用になるのは右サイドにおけるメネズとリベリ、左サイドのマルーダとリベリも同様であろう。誰が出ても同じクオリティを保つことは、チームが恒久的な強さを身に付けるために必須である。選手層の厚いレブルーであれば、相手に合わせて柔軟に布陣やメンバーを換え、その時々の最適なチームで臨むことが、むしろ豊富な人材を無駄なく使うことにも繋がるだろう。
次の試合はシーズン終了後の6月のEURO予選になるが、試合を積み重ねていくごとに、チームの形が出来上がっていくことを期待したい。