アンリ、負傷(05/3/9)

c0040315_944922.jpg先日行なわれたチャンピオンズリーグ決勝トーナメント第1回戦、2ndレグ、対バイエルン・ミュンヘン戦において、ティエリ・アンリ(FW・フランス代表、アーセナル)はゴールをあげた直後にふくらはぎを負傷し、3週間の戦線離脱を余儀なくされた。
フランス代表は、3/26(土)、30(水)にはそれぞれ、W杯予選対スイス戦、イスラエル戦を控えているが、どうやらアンリ抜きでこの大事な2つの試合に臨まなくてはならなくなりそうだ。

フランス代表は現在グループ4で勝ち点は首位アイルランド、3位イスラエルと並んでいるが、得失点差でかろうじて2位に付けている状態。
1位なら無条件に、2位なら成績に応じてプレーオフによりW杯の出場権を争うことになる。そのため、フランスとしてはどうしても1位通過、最悪でも2位をキープしなくては、94年W杯の出場権を逃した時のような悲劇のサイクルを繰り返すことになってしまう。
そして、その2位以上をキープするためには、先述の試合において、2つとも勝利を収めることが必須なのだ。

今のフランス代表は、個々の能力は高いものの、組織として機能しないチームとなっている。
このように、短期間での補正が難しい不備を抱えたチームが勝利を掴むためには、応急処置として個人技による打開が必要となると思われる。
そして、その打開手段の急先鋒こそがアンリでなのである。
ただ、アンリは「ブルー(フランス代表のユニフォーム)に袖を通すと活躍できない。」と揶揄されるほど、アーセナルとフランス代表でのギャップが大きい。
それでも、今のフランス代表は、アンリの超人的な個人技に頼らざるを得ないほど衰弱しているのだ。

そもそも、今までアンリが代表で活躍できなかったのは、彼の能力が劣っていることによるものではない。
フランス代表の黄金期とアンリの個人的なピークが、上手くかみ合わなかっただけなのだ。
アンリは、その能力を使いこなせる能力を持つ選手の中にいることで生きる選手である。
そして、彼が活躍しているアーセナルには、アンリを使いこなせる選手がたくさんいる。
しかし代表でのアンリは、悲運にも同じ属性を持つ偉大な才能と同じ時代を過ごすことになってしまったため、自身の才能を活かしてくれる選手と未だ巡り会えずにいるのだ。

98年W杯、EURO2000で優勝したフランスの強さの秘密は圧倒的な組織力にあった。
その頃のフランス代表にはジダンという才能を使いこなせる一方で、自身も組織の一部として機能しうる選手が彼を取り巻いていた。まさに黄金時代だったのだ。
あの頃のフランスは、一見ジダンの個人技に頼っているように見えるが、ジダンを活かすという1つの方向性を持つことにより、組織として成熟していたチームだった。つまり特定の個人の才能を活かしながらも、それに頼りきらない強さを持っていたのだ
しかも、あの頃のジダンは球離れの良いシンプルなプレーを心がけていた。
そのため、たとえジダンが抜けたとしても、組織としての成熟度により、チーム力を保持し続けることが出来たのだ。

しかしアンリがフランス代表のレギュラーとして定着したのは、フランス代表がジダンの個人技に頼るチームになってしまった2002年W杯の時。
2002年はその才能の不在により、EURO2004では、その才能の沈黙により、フランスは沈んだ。
チームの中心に据えられたジダンは、アンリを使いこなすことは出来なかったため、二つの才能は分離し、結果両者は孤立するに至った。
どんなに素晴らしい才能が揃おうと、かみ合わなければ意味がない。
そこにサッカーの難しさ、そして面白さがある。
そして、いくら素晴らしい才能を持とうとも、成功を収めるには仲間に恵まれるという強運も必要なのだということを考えさせられる。

いまのところ、アンリはその様な強運を掴んでいないように思える。
それでも、組織が分解した今のフランス代表には、一人でボールをもちこみ、フィニッシュまで決められる希有な選手であるアンリの力は不可欠だ。
今月末の試合にアンリが欠場することはかなりの痛手となるだろう。しかし、どうかこのエースが戻ってくるまで持ちこたえて欲しい。
c0040315_12514437.jpgそして、アンリが近い将来自身の才能を使いこなしてくれる「運命の人」と巡り会い、成功を収めることを願ってやまない。
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